大 前 繁 雄
東電福島原発事故以来、世論は「脱原発」一色に塗りつぶされた感がある。
しかし、ふり返ると、3月11日の東日本大震災発災以前、CO2を排出しない原発は、「温暖化ストップ」のエースとして、電源の大黒柱の地位を占めつつあった。政権末期になって、次から次へと脱原発政策を打ち出した菅直人前首相も、ゆくゆくは原発の全電源に占める割合を50%にまで高めるとマニフェストに明記し、原発を日本の有力な輸出産業に育てると宣言していたのである。
それが、千年に一度といわれる大震災、そしてそれによる福島の原発事故を境に、一転、極悪人にされてしまったのであるが、果してそれで良いのであろうか。
孫引きで恐縮であるが、先日読んだある雑誌に、米国の有名な科学誌『サイエンス』の記事が紹介されていた。それによると、本当に恐いのは、原発より温暖化であるとのこと。理由は、放射能というのは現在、医療にまで活用されている通り、原子レベルまで科学的に解明されており、安全対応さえ誤まらなければそれほど恐れる必要はない。たとえて言えばフグの毒のようなもので、キチンと調理さえすれば全く恐くないのと同じだそうである。
これに対して温暖化の方は、世界中の学者が必死に取り組んでいるが、今に至るも科学的にほとんど解明されていないとのことである。温暖化の主な原因がCO2の大量排出にあるということは、ほぼ世界の定説になりつつあるが、これとて絶対とはいえず反論する学者も結構多い。ましてや近年、なぜ集中豪雨や竜巻が頻発するのか、世界中に偏在して異常な熱波や寒波が襲うのはなぜか、といった疑問については、全く科学的に説明できないそうである。
なるほど、原発事故がひとたび起ると大変な被害をもたらすということは、今回の福島の事故でよく解った。しかし、だからといって原発を止めて、CO2を大量に排出する石炭や石油をボンボン焚いて良いものだろうかと、不安に思うのは私一人ではなかろう。
先般、国会で再生エネルギー法案が通り、わが国も本格的に風力や太陽光などの自然エネルギー促進に取り組むことになった。
私は、自然エネルギーの促進にはもちろん大賛成である。しかしその代替は、まずCO2を大量排出する石油、石炭などの火力を極力減らすことが先であってそれらの削減が相当程度進んだあと、減原発、脱原発に進むべきと思うのだが、いかがであろうか。
(「西宮老人福祉センターニュース」2011年11月号投稿文を一部加筆訂正)

